2021年12月22日 15:50
映画監督・安藤桃子さん「父・奥田瑛二がくれた“親の七光り”は『超貧乏暮らし』でした」
しかしこれも“わがまま”で、しょせん“親の脛かじり”と思われるのではないか。
ところが“奥田瑛二の七光り”は、そこらのものとは“別モノ”だったのである。
ビートルズやシド&ナンシーを生んだイギリスで学生生活を謳歌していた桃子さんに、母から電話があったのは、大学2年生の初夏のことだった。
「お父さんの会社が倒産するかも。学費はもう払えない……ごめんね」
当時、父の奥田さんは映画製作会社を設立し、念願だった監督業に進出していたのだが、製作費を騙し取られ、莫大な負債を抱えてしまったのだという。
「そこから私は一気に“超貧乏生活”でした。アパートメントを出て、パンツとブラジャーと数枚の着替えのみで、友人宅を渡り歩きはじめました」
最初の友人宅は治安の悪い集合住宅街だった。
「窓からは隙間風、シャワーは2日に一度だけ、床にゴロ寝でネズミとの共同生活。
シャンプーがなくて髪にオリーブオイルを塗って寝たら、翌朝、頭が蝿だらけで(笑)」
そんな半年間の極貧生活は、しかし桃子さんの創作活動のエッセンスを与えてくれた。
「お金がなくても、知恵やアイディアでなんでも生み出せる。クリエイティブの可能性と楽しさを教えてくれたのが、ロンドンでの生活でした」