2022年12月30日 06:00
寂聴さん元秘書が語る 出家前の“はあちゃん”の素顔と孤独
私はずっとそばにいて、本人にも何度か尋ねもしましたが、そのたびに違う答えが返ってきて気になっていました。私なりの真実にたどり着いたのは、つい最近のことです」
この秋に一周忌を迎え、長尾さんの本など多くの出版物や、最後の不倫相手だった作家・井上光晴の長女である井上荒野原作の映画『あちらにいる鬼』の公開もあり、寂聴さんの生涯が注目されている。
そんななか、出会ってから60年超、血縁にして秘書の長尾さんだからこそ知り得た「人間・瀬戸内寂聴」の素顔と秘話について語ってもらった。
■“伝説のはあちゃん”は親戚の集まりでいつも話題にのぼっていた
長尾さんが、やはり文学好きの両親のもとに徳島県で生まれたのは’56年のこと。寂聴さんとは34歳の年の差となるが、物心ついたとき、すでに気になる存在だった。
「親戚が集まると、いつも話題になっていました。“あの晴美は”、と。まだ子供でしたから、自分が生まれる前の駆け落ち騒動の意味などわかりません。
繰り返し大人たちが口にする名前の記憶が鮮烈で、私にとっては長い間、“伝説のはあちゃん”だったんです」
はあちゃんこと寂聴さんが20歳で女学校の教師と結婚したものの、夫の教え子だった涼太と不倫して4歳の娘を置いて家を出たのが、
’48年。