2023年7月2日 06:00
売野雅勇語る『少女A』誕生秘話 中森明菜は“繊細で傷つきやすい少女”に見えた
『六本木純情派』『禁区』『星屑のステージ』『め組のひと』など、売野は丸椅子に座り、リズムに合わせて足を小刻みに動かしながら、自ら作詞した歌を聴き込む。
「いいんじゃない、問題ないよ。ただ、1行目と2行目のアタックがもうちょっと強いほうがいいかも」
5年ほど前、売野自身が発掘したユニットに、笑顔でアドバイスを始めたのだった。
「歌がうまいこと、ヴィジュアルに華があることは大事ですが、いちばんのポイントは素直なこと。嫌な人間じゃ仕事をしても楽しくないじゃないですか。人生、人との出会いでできているから、どうせなら好きな人と仕事をしたい」
売野は大学卒業後はコピーライターとして活躍。レコードやCDのキャッチコピーなどを担当したことをきっかけに、シャネルズ(現ラッツ&スター)の楽曲で作詞家デビュー。中森明菜のセカンドシングル『少女A』で作詞家としての足場を確かなものにし、『涙のリクエスト』や『2億4千万の瞳』などヒット曲を連発した。
「計画どおりにはいかないから、そもそも計画は立てません。むしろ流れに乗って、目の前にやってきた仕事や出会いを大事にしてきたら、いまに至ったという感じの人生なんです」