私は唄い続ける坂本龍一さんの魂を…元ちとせが反戦歌『死んだ女の子』に込めた祈りと覚悟
演奏前にしっかり意思統一をして録音を一発で終わらせようとしたのは、弦楽器の奏者にすごくハードな演奏が必要だったので、何回もやらせたくないという坂本さんの心遣いもあって。そういうやさしさは、本当にかっこよかったですね」
やがてスタジオの演奏家らの気持ちも高まっていき、そこに元ちとせさんの、平和な世界を心から願うという渾身の歌声が重ねられていく。
「二度と同じ過ちを繰り返してほしくないという思いで、みんなが一つになりました」
■広島平和記念資料館で衝撃を受けて『死んだ女の子』に向き合った
79年1月5日、鹿児島県大島郡瀬戸内町で生まれた元さん。
19歳の秋に上京し、数寄屋橋のCDショップでアルバイトをしながら、デビューに備えた。
「ちょっとデモ盤を録るから」
所属した音楽事務所の当時の社長でプロデューサーも務めていた森川欣信氏(70)からある1曲を渡されたのは、このころのことだ。
「それが、『死んだ女の子』でした。単純に、なんで、こんな怖いタイトルの曲をと思いました。歌詞も原爆で幼い女の子の髪の毛が焼けたりするという内容で、正直、私の中ではどういう感情で歌に向き合っていいのかわからなくて。