“ウザさが癖になる”スズ子の弟子・小夜ちゃんを熱演 富田望生「天国の父と震災の孤独が、私を女優へと導いた」
その後は、東京の中学校に通った。いわき時代はピアノを習い、将来はピアノの先生になるのが夢だった。
だが、震災後の移住で環境が大きく変わると、その情熱は次第に冷めていったという。
「東京でも教室探して通ったんです。でも、いわきで通った教室への思い入れが強かったのか『ここでピアノ、やりたくないな』って」
無気力になっていく娘を心配し、母はさまざまな習い事を勧めた。でも、興味をかき立てるものはなかなか見つからなかった。
■テレビに出れば友達が見てくれる
「そんなときです。子役養成所のオーディションの広告を見つけて咄嗟に『これだ!』と。
母に内緒で応募したんです。
でも、俳優になりたいと思ったわけじゃなくて。ただ、テレビに出たかったんです」
このとき、富田は中学1年生。まだ携帯電話も持っていなかった。
「とにかくテレビに出られたら、いわきの友達が見てくれるんじゃないか、そう思ったんです」
このときもまだ、胸中にあったのは故郷のこと。そして、その思いが、結果的には彼女を芝居の世界へといざなったのだった。
「エキストラやレッスンをして。中学3年で最初の出演作になる映画『ソロモンの偽証』のオーディションに合格したんです」