目や耳が不自由な人でも誰でも一緒に楽しめる「日本で唯一のユニバーサルシアター」を誕生させた女性
結局、月4回しか営業できないという変則的な上映スタイルを受け入れるしかなかった。
「でも、厳しい制限のあるなか、北区の地域文化振興の助成金交付の審査会場で、子育て支援のNPOグループのママさんたちと知り合い、それがのちの親子鑑賞室につながるんです」
この前向きさ、ひたむきさが、再び新たな道を開いていく。
「’16年の年明けでした。アートスペースの場所を大家さんの事情で立ちのかなくてはならなくなり、すぐに物件探しを始めました」
そして見つけたのが、現在の場所。まだ工事中だったが、2階には15畳の防音室もあるという。
「よし、ここで音声ガイドの録音もできるなと。さらにスケルトン状態だった1階に足を踏み入れた途端、ドンツキの正面にスクリーンのある光景がパーッと浮かんだんです。さあ、動き出せるぞと張り切っていた矢先、また難題が」
設計会社の見積金額は1階の防音工事だけで1,500万円。
愕然としてしまう。これまでずっと支えてきてくれた夫も、「どうやって、そんな大金を作るの。借金したとしても、責任は取れるのかい」と、今回ばかりは諸手を挙げての賛成とはならなかった。
「その後、義父が説得してくれたようで、夫も『応援するから頑張れよ』と言ってくれました。