目や耳が不自由な人でも誰でも一緒に楽しめる「日本で唯一のユニバーサルシアター」を誕生させた女性
オリジナルの音声ガイドは、2階の制作室で作られている。また興味深いのは、“障害者料金”がないことだ。
「ここチュプキは社会的、環境的な障害者は存在しない映画館にしたい、と思っていたから。その代わり、介助者は無料にしました」
’16年9月1日、いよいよシネマ・チュプキ・タバタがオープン。こけら落としはチャップリン特集と、アメリカの砂漠に立つモーテルでの人間模様を描いた『バグダッド・カフェ』だった。
「この映画を最初に観たのは、大学2年のころ。姉のことでも深い悩みのなかにいて、登場人物に自分たちを重ねながら癒されていることに気付いたり。いつか私も、訪れた人を優しく迎え入れる砂漠のオアシスのような場所を作りたいと、初めて思いました」
夜7時30分からの上映を、平塚さんは映写室で作業しながら観ていた。
気付けば、流れてきた主題歌『コーリング・ユー』を聴きながら、涙が頬を伝っていた。
「映写室からは、スクリーンがちょっと明るくなる場面だと、観客の表情が見えるんです。実は私、映画を観てるお客さんの顔を見るのが大好きで、その様子を見てたら、もうダメでしたね」
映画を通じて、すべての人に寄り添っていくという平塚さんの夢が大きく動き始めた。