死の際で見つけた幸福…1歳9カ月のわが子を看取った女性が始めた「理想のホスピス作り」
「日本にはいまどのくらいあると思いますか?答えは3カ所。このほかに私たちのような準備団体が10団体あります」
「ふくいこどもホスピス」という団体の代表として千尋さんは今、こどもホスピスを設立する活動に身を投じている。この日、彼女の話に耳を傾けていたのは福井県内で慈善活動をする企業人や有志たちだ。
彼らの理解や応援を得ることも目標に一歩近づくこと。千尋さんはドイツのホスピスで夕青くんを看取った経験も語り、福井の地にこどもホスピスを建てる意義を訴えると、会場は大きな拍手に包まれた。
「千尋ちゃん、お疲れさま――」
講演が終わるや、千尋さんに駆け寄る山内こずえさんは、ともに活動する最初期のメンバーだ。
「今日はこんなに豪華な会で講演したの?緊張しなかった?」
「汗が止まらなかったよ――」
山内さんの顔を見るなり石田さんの表情がゆるむ。幼なじみのような間柄に見えるが2人の出会いは2年前のこと。
「山内さんも私と同じように、子供を看取った経験をしています。彼女は出会ったその日に、私の計画に賛同してくれました」
ホスピスというと、一般的には「最期を穏やかに過ごす場所」というイメージが強い。