“駆け込み寺”の庵主さん語る女性のあり方「あなたの名前は“お母さん”でも“奥さん”でもありません」
互いにいたわり合っていきましょう」
誰からも親しみを込めて尼寺の主を意味する“庵主さん”と呼ばれている、25代住職の松山照紀さん(61)が笑顔で応じる。
不徹寺は、江戸時代に女流俳人の田ステ女が創建してから300年以上にわたり、代々、尼僧が守り続けてきた、門跡寺院を除けば日本唯一の禅寺だ。
この日は午後から、女性限定、携帯や化粧はご法度の「1泊2日の修行体験」が行われることになっており、梶田さんは大阪から同世代の友人と参加したのだった。
「今年1月に妹をがんで亡くすなど、立て続けに身内に不幸があって、うつ状態になりました。私は自分より家族のことで悩んで仏教の本も読み尽くしましたが、余計にわからなくなりました。今は知識を増やすより、助けてほしいという思いが正直あります」
それを聞いた庵主さんが、おでこの辺りを指さしながら、
「なまじ学ぶと、ココで考えるようになってしまいがちです。この本堂の壁に、『不生』という墨文字の額がありますね。ふしょう、と読みます。
ごく簡単に言えば、あなたそのものが仏だから生まれたままの姿でいい、との意。赤ん坊に立ち返ったら、恐れもない、欲もない、それは幸せなことじゃないかと。