“駆け込み寺”の庵主さん語る女性のあり方「あなたの名前は“お母さん”でも“奥さん”でもありません」
そう説明する庵主さんに、梶田さんが問いかける。
「60歳を過ぎたころより、ふだんから何かに集中しようとしても、頭のどこかに、常に生きていく不安があります。誰もが、こんなに悩んでいるものでしょうか」
うなずきながら聞いていた庵主さんは、静かに語り始めた。
「子育て、病気、不倫、嫁姑問題など女性からの電話相談はほぼ毎日で、ときには夜中に『眠れないんです』と泣きながらかかってくる。一人暮らしじゃないんです。家族がいても、『寂しい』と言うんですね。
実は今朝も、この修行体験が始まる前に、関西から50代後半のご夫婦が訪ねてこられました。“夫の定年後の生活プランに夫婦で食い違いが生じて困っている”と」
夫は会社生活から解放されたら、今度は夫婦の時間を楽しみたいと考えている。
一方の妻は、
「60代、70代を前に自分の体のメンテナンスだけで精いっぱいなのに、もう主人の面倒まで見る気力はありません。気がつけば、この人の世話ばかりしてきた。子育ても終えて“私の人生っていったい何だったんだろう”って、つい考えてしまうんです」
庵主さんが言う。
「双方の話を聞いてわかったのは、とにかく奥さんの心身が、もういっぱいいっぱいだということ。