シリア人夫亡くした日本人学者が実行する、シリアのためにできること
6月最初の日曜日、東京・上野の貸しオフィスの一角。「イブラ・ワ・ハイト」の主要メンバー8人が集まり、定例会議が行われた。イブラ・ワ・ハイトとは、アラビア語で「針と糸」のこと。紛争の続くシリアの女性たちが伝統技法で手縫いした刺繍を適正価格で買い取り、日本で販売することで自活支援を続けている。
’11年3月の内戦勃発以来、人口およそ1,850万人の半数以上が国外へ避難し、50万人近くが命を落としたとされるシリア。今年4月も、北西部のイドリブ県への空爆でサリンが使用された可能性があるとされ、口から泡を吹いて痙攣する子どもたちの映像は世界中に衝撃を与えた。最近では、「イスラム国」との関連で語られることも多い。
「過激派が口実にしているだけで、宗教と残虐なテロはまったく結びつきません。
私たち母娘も無理にイスラムの習慣を押し付けられていたら、異国での生活は続けられなかったでしょう」
そう話すのは、考古学者の山崎やよいさん(59)。イブラ・ワ・ハイトの始まりは、シリアで紛争が勃発した2年後の’13年5月。彼女が中心となり、仲間と立ち上げた。