日本初の女性獣医師語る震災 子供の目輝いた「動物との絆」
裕子先生と、東日本大震災後に宮城の被災地を愛犬クレールとともに訪問した。仙台の仮設住宅の集会室には、20人ほどの子どもやお年寄りが待っていた。
「まず手をグーにして、犬の鼻先に持っていってください。犬がクンクンとあなたの匂いを確認したら、次はパーにして、アゴの下を『いい子ね』と言いながらなで、リラックスさせてあげてください」と小林さんが説明すると、子どもたちが目を輝かせて、最初は恐る恐る、やがて犬の体にふれた。
「わあ、モコモコしてる」「あっ、動物って、温かいんだなぁ」
小林さんは、そのとき集会室の奥にたたずんでいた3きょうだいの姿が忘れられないという。
「みなさん、娯楽からは遠ざかっていたはずなのに、3人だけが近くに来ないんです。仮設のスタッフに聞いたら、両親を亡くしたきょうだいたちだと。きっと犬の大好きなご家族だったと思うんです。
最後までいてくれましたから。少しでも気持ちが癒せたかなと、胸が詰まって泣きそうになりましたが、ボスである裕子先生から、活動の間は涙を見せてはいけないと教えられていますから、グッと我慢しました」