「上田紬」女性工芸士が海外で気づいた民族衣装の素晴らしさ
「一目で気に入りましてね。見たこともない明るい色味なんだけど上手にまとめて、ちゃんと紬になっている。普通の感性ではこれは作れない、この人はいい反物を作れると直感したんです」(山田さん)
突然の朗報に、小岩井家は喜びに沸いた。
「職人を続ける糸口を見つけたーー、そんな気持ちでした」(カリナさん)
3年ほど後、長野市で開催された紬展を訪れると、初めて「小岩井カリナ」の名前で織り上げた反物も展示されていた。カリナさんが懐かしく眺めていたときである。女性3世代の客が足を止めた。
「おばあちゃんが私の反物をお孫さんの胸元に合わせて、なんとその場で買ってくださったんです。明るい色味の紬が、10代のお孫さんに本当によくお似合いだったんですよ。
思わず、『これ、私が最初に作った着物なんです』と声をかけてしまいました。『まあ、あなたが!』と、忘れられない出会いです。すごくうれしかったですね」(カリナさん)
昨年、小岩井紬工房の代表を務める弟・良馬さんとともに、伝統工芸士として認定を受けるまでになったカリナさん。