夏を舞台にした岩松了の新作『二度目の夏』が、東京・本多劇場で間もなく幕を開ける。アメリカの現代作家スティーヴン・ミルハウザーが『トリスタンとイゾルデ』をモチーフに書いた小説『木に登る王』を読んだ岩松が、それをベースに“男の嫉妬”にまつわる新たな物語を誕生させた。主な登場人物は、何不自由なく育った若社長・慎一郎(東出昌大)と2年前に結婚した妻・いずみ(水上京香)、彼の後輩で親友の謙吾(仲野太賀)。だがそこは岩松のこと、単純な嫉妬や三角関係の話には着地させない。
「嫉妬っていうのは劇の素材になる感情なんですよね、シェイクスピアにしてもなんにしても。それをただ僕がやってもしょうがないので、ちょっと結論めいた話になりますが、嫉妬心がないということもドラマじゃないかと。そういう話を書けば自分なりのホンが書けるかな、みたいな気持ちがあって。だいたい演出家っていうのは演出するとき役者に、“お前、生活の中にドラマはないのか!”とか言うわけでしょ(笑)。
つまり、嫉妬心にしろ、何にしろ、人間としての感情の凹凸がなければ演じられないだろうみたいな気持ちがあるわけで、演劇自体に抵触するテーマだとも思ったんですよ。