2024年2月13日 12:00
アリ・アスター監督が映画づくりで“常に意識していること”は?
ボーの帰省の旅はとにかく予想外の連続だ。母の訃報を受けて、家を出るまでに想像を絶するトラブルが発生し、わけがわからないうちに見たこともない場所に放り込まれ、恐ろしさに囚われながら脱走すれば深い森に迷い込んでいる。これは現実なのか? それとも? 少し迷う観客もいるかもしれないが、アスター監督の意図は明快だ。
「この映画では脚本を書く段階からすべて“ボーの主観”だけで描こうと決めていました。執筆中には主観と客観を行き来したくなる瞬間もありましたが、この映画ではボーの内面が反映された世界だけを観客に見てもらいたいと思ったのです。そう考えると、この映画はさまざまなことが起こりますが、極めてシンプルな話なんです。つまり、この映画に登場する世界と、ボーの内面には不一致がまったくないのです」
ボーが不安になると、彼の見ている世界も歪みだす。彼がここではない場所、あったかもしれない未来に想いをはせると、スクリーンでは現実ではなさそうな空間が広がる。
ボーの心の状態が、そのままスクリーンに映し出される。そして常に“ボーはおそれている”。こんな役を演じることのできる俳優はそうそういるものではない。