2024年2月13日 12:00
アリ・アスター監督が映画づくりで“常に意識していること”は?
単なる恐怖ではない、不条理と呼ぶのは安易、不安だけで片付けられるものではない……この映画を観ることでしか体験できない“唯一無二の感情、すなわち世界”がスクリーンに映し出されるのだ。
興味深いのは、本作も過去のアスター作品も、観客は主人公の視点になって物語を追うが、同時に主人公と観客の“シンクロ”を明らかに邪魔したり、冷や水をかけたり、フッと冷静にさせる展開が次々に登場するのだ。キャラクターに共感・同化しながら、同時に強烈な違和感・異化の時間がやってくる。これこそがアリ・アスター映画の最大の特徴ではないだろうか。
「おお、ありがとう! そのことは創作する中で常に意識しています。僕がやろうとしているのは、観客に親密さを感じさせながら、同時に異化作用を起こさせること。極めて客観的で計算され尽くされていて、不協和音が鳴っているようなトーンなのに、感情面では観客がキャラクターに完全に同化するものにしたいんです。さらに言うと、もしキャラクターが感情的に変化を遂げるのであれば、その感情の動きや変化に観客が寄り添えるものでありたいと思っています」
遠くから主人公を眺めているのではなく、一緒になって物語を追体験している気分なのに、日常では絶対に起こり得ないことが起こり、予想や想像の斜め上をいく出来事が急に発生する。