森田剛の思う“言葉の信用性”「本心は目と言葉に出る」
戦争で命を落とした国民のため、当時おこなわれていた「招魂祭」を再現したシーンもある。マイク越しに「母さん」と呼びかける和田の声は、まさにすぐ隣で、魂となったはずの夫や息子から語りかけられているように、深く響く。
「一木さんのこだわりが、とくに強く見えたシーンでした。僕としては、やりすぎでいいや、くらいの感覚だったんです。感情をどんどん声に乗せて、完全に“その人になりきる”つもりで。それこそ和田さんは憑依型のアナウンサーだったと思うので。」
声に説得力を持たせる
森田が演じる和田の声には、説得力がある。聞いていると、この人は本心でこう考えているんだ、という気になる。どのように当時のアナウンス技術をなぞっていったのだろうか。
「92歳の大ベテランアナウンサー、50歳の現役アナウンサーのお二人のもとで、すべてのアナウンスシーンを練習しました。クランクイン前、『森田さんが表現する和田さんでいいんですよ』と言ってもらえて、嬉しかったですね。最低限、当時のアナウンス技術に乗っ取りつつ、でも、和田さんを完コピするのではない。あくまで森田さんの表現でいいんですよ、と言ってもらえたのは、和田さんのアナウンスの真骨頂でもある『自由』を体現しているようにも思えて、演じるうえで自信に繋がりました」