森田剛の思う“言葉の信用性”「本心は目と言葉に出る」
独特の深み、説得力としか言えない磁力のようなものを声に乗せるために、意識したのは「音程、トーン」だという。
「たとえば招魂祭のシーンでは、若くして亡くなった兵士が両親に語りかけるように、17歳くらいの気持ちを意識して、少し高めのトーンに。声の高さや低さ、張り方、あとは声を発しながら目線をどこに向けるかなど、一木さんのこだわりも踏まえながら、やらせてもらいました。」
森田演じる和田の声がリアルに染み渡るほど、かつて日本でおこなわれていた、どうしようもない現実に、言葉がなくなる。森田自身、当時のアナウンサーが感じていたであろう、葛藤や理不尽な思いを表現することに対し「エネルギーが必要だった」と述懐する。
「当時に生きていた人たちみんな、これから戦争が起こるんだとは思ってもいなかったはずですし、この先に何が待っているかなんて、想像もできなかったはずです。でも、現代を生きる僕たちは、どんな悲惨なことが起こるか、そのすべてを知っている。真実に対して集中し、そこに自ら触れていこう、という感覚でいました」
2023年8月に放送されてから、一年越しに公開される劇場版では、描ききれなかった細部まで含め、より深く当時のアナウンサーたちの苦悩が浮き彫りにされている。