くらし情報『人間たちの“生”への希求を描き出す4篇の物語 『デカローグ』最終章が上演中』

人間たちの“生”への希求を描き出す4篇の物語 『デカローグ』最終章が上演中

マイカが22歳の女性にしては、やや地味な出で立ちであるのと対比してアニャの赤がより際立つ。それは、母親のエヴァから注がれる愛情の濃淡の違いを表しているようでもある。エヴァはアニャを溺愛し、子育てにマイカを一切関わらせようとしない。そんな状況に耐えきれなくなってマイカが家出を決意する。

十戒のひとつ「汝、盗むなかれ」をモチーフとする『デカローグ7』だが、マイカが盗まれたのは実の娘であり、母親という立場。主演の吉田は、そんなマイカが一家の中で抱える孤独や虚しさ、哀しみ、そして怒りを決して多くはないセリフと静かな佇まいの中で見事に表現。物語の最後のマイカの悲壮な決断、そして電車の音にかき消されるアニャの叫びが観る者の心を強く打つ。

そして、このエピソードにおいて、鮮烈な存在感を放っているのが、津田が演じる母親・エヴァである。
そもそもアニャを自分の娘としたのは、16歳のマイカの出産が醜聞になるのを避けるためだったはずだが、マイカがアニャを連れて失踪した後のエヴァの狂乱ぶりからは、「世間体」などという言葉では説明しきれない深い業や執着心が垣間見える。マイカとエヴァというすれ違う母と娘の姿が「母親というのは何なのか?」

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