2023年3月2日 18:00
片桐はいり×岡田利規 対談 喫茶店上演の『あなたが彼女にしてあげられることは何もない』
街中にあるガラス張りのカフェの片隅。コーヒーを注文した女性がひとり、何やらボソボソとつぶやき始める。観客は、カフェの外からガラス越しにその様子と、テーブルを俯瞰して彼女の手もとを映すモニター画面を見守る――。岡田利規(作・演出)の『あなたが彼女にしてあげられることは何もない』は、2015年に大分で初演され、翌年、横浜や東京・池袋のカフェでも上演された。が、新たに片桐はいりを迎えて神戸の喫茶店で上演されている今回のヴァージョンは、テキストは同じなのに、まったく印象の異なる作品になっている。神戸公演を前に、最後の稽古を終えた直後のふたりが語った。
現実の空間に割り込んできたフィクション
岡田なんかこの作品は、新しいフェーズに突入した感じになってますね。
片桐今までと違うことになっているのでは。
岡田違うことになってます。なんか今日のリハーサルのはいりさん、コーヒーの飲み残しのカップに残った模様で占うシャーマンみたいだった。その異様さが、日常的な喫茶店という状況の中で生み出すコントラストを想像したら深く感動してしまいました。いや、すごいものを観てしまった。
片桐そうですか。
岡田初演の際にこの作品を構想するときのレファレンスにしていたのがたとえばマーティン・スコセッシュの『タクシードライバー』でした。