スタジオジブリの過去作はどのように“デジタル化”されたのか? スタッフが語る
―フィルムは時間が経つほどに劣化していくことを考えると、10年前にスキャンしていたのは先見の明があったということですね。
奥井当時は映像を4Kで処理することはほとんどなかったと思うんです。HDの処理が一般的で、4K以上でスキャンして、4Kで処理していくのはお金もかかりますし、時間もかかるんですね。今でこそPCも速くなりましたけど、10数年前は今よりは遅かったので、『ナウシカ』で作業を始めた頃はデータの取り回しで相当苦労しました。
―音響についてはDCPを作成する上でどのような処理を行っていますか?
古城映画の最後のクレジットに“DOLBY STEREO”って出てきたと思うんですけど、ドルビーステレオはステレオ(左右2チャンネル)ではなくサラウンドなんです。DCPでは(そもそもチャンネル数や音響の仕様が異なるため)そのままでは入れられないので、5.1チャンネルの器の中にドルビー・ステレオの音を広げたものを落とし込んでる状態です。元は、左・中央・右・サラウンドの4トラックで、劇場のプロセッサで音を広げていたんですけど、いまは劇場のプロセッサに音を広げる機能がないので、完全に広げた状態を入れている感じです。