2021年10月3日 22:00
《SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021》閉幕、マルタ映画として初ノミネートの『ルッツ』が最優秀作品賞に
ビデオで登場したレンツ監督は「この作品は完成に5、6年を費やし、皆で必死に作り上げました。今回、遠く離れた国で、監督賞を受賞しましたこと、本当に驚いています。私は今、映画の持つ感情やストーリーが地球のほぼ反対の土地でも届いたのだと、実感しております」と喜びを語り、「いま私は、火山が噴火したカナリア諸島で、まさに噴火の様子を撮影しています。今回の受賞によって、私の中には、熱いエネルギーと炎が燃えています」と今後への意欲を見せた。
監督賞を受賞した『ライバル』マークス・レンツ監督
審査員を務めた船戸慶子氏は、本作について「子どもが主人公でありながら、一切の甘えや優しさを交えず、東ヨーロッパのひとつの現実をある種生々しく切り取ってドラマとして成立させた監督の手腕が際立った作品でした」とまず語り、「一方で、男の子が最初に恋をするのは母親であるという、エディプス・シンドロームという現象についても考えました。
作品内の少年の母親はこの上なくチャーミングで。彼女のことを好きになるドイツ人の中年男に、ライバル心を燃やす少年の気持ちが痛いほど伝わってくる。ただ、彼を守ってくれる大人が誰もいなくなったとき、少年は自らを奮い立たせ自分の足で歩いていかなければならない。