2023年8月16日 12:00
裁判、それ自体もひとつの“事件”。名作を現代によみがえらせる『連続ドラマW 事件』で椎名桔平が法廷に立つ
言ってしまえば、舞台に立っているような感覚も出てきます。「こうでしょう?」「ここはよく聞いてくださいね!」と、芝居がかった振る舞いも時には必要で。演出の水田(成英)監督も、その描写にすごくこだわっていらっしゃいました。「このシーンでは裁判員を味方につけるような言い方をしてください」なんて指示もありましたね。
──その点、椎名さん演じる弁護士の菊地は、機知に富んだ弁舌の持ち主です。一方、裁判官時代の苦い過去も抱えていて……。
椎名菊地には払拭しきれない過去があり、彼にとっては過去を乗り越えようとする再生物語にもなっています。事件を起こした人間だけでなく、人は誰しも失敗や間違い、後悔を抱えて生きていますから。
あのときこうすればよかった、あのときに戻れたらあんな選択はしないのに……ということがある。恋愛のことじゃありませんよ(笑)。
ですが、それに気づけず、次の一歩をなかなか踏み出せないのも人生。菊地も5年間悩んでいるんです。裁判官を辞め、法曹の世界から去ればよかったんだろうけど、どこかしがみついている。もう二度と人を裁くのは真っ平だと思っているにもかかわらず。そんな彼が青年を弁護することになり、その過程でいろんなことをよみがえらせていく。