【観劇レポート】3年の時を経て上演中のミュージカル『アナスタシア』キャストの魅力に迫る
革命から10年後の1927年、レニングラードと改名されようとしているサンクトペテルブルクでは皇帝の末娘アナスタシア生存の噂が囁かれていて、革命前にパリに移り住んでいた皇帝の母マリア皇太后は、孫娘を探すため多額の賞金を懸けている。詐欺師のディミトリとヴラドはその懸賞金を得ようと、記憶喪失の娘アーニャをアナスタシアに仕立て上げパリへ向かおうとするのだが……。
ミュージカル『アナスタシア』より、高精細LED映像を使った背景にも注目
本題に入る前に、作品の魅力についても触れておこう。『アナスタシア』はミュージカルとして非常に強度の高い作品である。史実に材をとったリアルな時代背景の上に、記憶喪失の少女の正体は皇女なのかという歴史ロマンが展開し、さらにサンクトペテルブルクからパリへの手に汗握る脱出劇、そして魅力的な詐欺師とのロマンスが描かれていく物語がまず、隙のない面白さだ。その物語を『過去への旅』『遠い12月』といった心に残る名曲の数々が盛り上げる。ロシア宮廷での豪華なドレス、ジャズエイジのパリのモードな服など、衣裳も目に楽しい。さらに眼目は、舞台美術の肝である高精細LED。
ビビッドで美しい色彩もさることながら、それをまるでそこに実際にあるかのように奥行まで感じられる精密さで映し出す技術は、他で経験したことのないリアリティだ。