尾上右近ロングインタビュー! テーマは“親の愛”。8回目の自主公演に込めた思い
この間さまざまな経験を経て、僕の中で色々なものが膨らみ、自分も大人になって再び『道成寺』を踊っているんだ、と。昨年の「研の會」は『夏祭浪花鑑』と『京鹿子娘道成寺』の2本立てでしたので、さっきまで団七という役で血みどろ泥だらけになっていた人が、次の幕では綺麗な女形として登場する、その奮闘ぶりを観ていただいた。観る側もやる側も気分が高まってからの『道成寺』ですから、ある種の勢いまかせなところもあった。でも歌舞伎座の正月興行では他の俳優さんたちが一幕ごと紡いできた流れの中で最後の一幕として自分が『道成寺』を踊る。自主公演とは訳が違います。冷静さを心がけました。
ご当地もの『摂州合邦辻』と尾上眞秀と挑む『連獅子』
――さて、今年は『摂州合邦辻』と『連獅子』を選ばれました。この演目にした理由を教えてください。
まず今年は大阪でも公演をしますので、大阪が舞台の『摂州合邦辻』は“ご当地もの”になっていいなというのがひとつ。あと単純に、好きなんです。ドロドロしている物語なんだけど、最後は「ああ、これで良かったんだ」と晴れやかな気持ちになるので。
――河内国の大名・高安左衛門に後添えとして嫁いだ玉手御前が義理の息子である俊徳丸に道ならぬ恋心を抱き、これから逃れるために俊徳丸は許嫁の浅香姫と共に逃げて……という物語。