おとな向け映画ガイド 今週のオススメはこの4作品。
『シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢』
ガウディのサグラダ・ファミリア、アンコールワット遺跡など、写真で見るだけでも、ただひたすら感嘆し、凄い!とうなるしかない建造物があります。この映画にでてくる、フランスの片田舎に建つ「宮殿」にも驚きます。シュヴァルという郵便配達員が、33年かけ、たった一人で手造りした理想宮です。実際にあった話で、この建造物はその後きちんと修復管理され、いまもフランス南東部の小さな村にあり、観光名所になっているのだそうです。
郵便配達で1日32キロ歩き、仕事を終えてから10時間が宮殿作り。配達の途中も、理想宮のことを考え、路傍でみつけた石を拾い、これはあそこに使おうとか……。19世紀の終わりから、世紀をまたぎ、第1次大戦もほぼ無縁に、1920年代の半ばまでこつこつと作り続けたのです。実直を絵に書いたような彼が、なぜこういうことを始め、何をめざしたのか。
きっかけは、娘に喜んでほしい、娘を驚かせたい、という不器用な男の愛の表現だったのですが。しかし、それにしては抽象的でぶっとんだ着想というか想像力の産物です。
ジャック・ガンブランという役者が演じるシュヴァルは、日本でいうとまるで若い頃の笠智衆のようなたたずまい。