2022年11月15日 12:00
大野和士が新国立劇場《ボリス・ゴドゥノフ》を語る ──人間の内面を巧みに描く、天才ムソルグスキーの大傑作
それをこのような時期に日本で初演することはとても意味のあることだと思っています」
もちろん世界情勢は今回の上演にも影響している。当初は3人のロシア人歌手の出演が予定されていたが、招聘を断念した。
「ボリスと修道僧のピーメン。そしてボリスの臣民でありながら、裏切って行ってボリスの政権を倒すシュイスキーという役の3人を新たにお願いしました。ボリス・ゴドゥノフ役は私の友人のギド・イェンティンスさん。昨年の《ニュルンベルクのマイスタージンガー》でポーグナー役を歌ったバス歌手です。彼がボリスを2回、ロシア語で歌っているという情報が耳に入ってきたので、すぐ彼に電話して、やっていただくことにしました。ピーメン役は実はなかなか決まらなかったんです。
あるとき、私がたまたまYouTubeで見つけた素晴らしい声のバス歌手がジョージア人のゴデルジ・ジャネリーゼさんでした。まだ32歳。ピーメンは老僧の役なので、年齢的にどうかとは思ったのですが、ここまで声のいい人を見つけることはなかなかできない。これは運命だと思いました」
「シュイスキーは、これも私の友人のアーノルド・ベズイエンさんというオランダ人テノールです。