2022年11月15日 12:00
大野和士が新国立劇場《ボリス・ゴドゥノフ》を語る ──人間の内面を巧みに描く、天才ムソルグスキーの大傑作
11月15日(火) に初日を迎える新国立劇場のムソルグスキーのオペラ《ボリス・ゴドゥノフ》新演出初演。直前の稽古の合間を縫って、公演を指揮する大野和士芸術監督に話を聞くことができた。
「ムソルグスキー畢生の大作。私はムソルグスキーは不世出の大天才と言っていいと思っています。それはたとえばショスタコーヴィチも言っているんですね。彼はムソルグスキーの未完のオペラ《ホヴァーンシチナ》を補完していますが、私たちがショスタコーヴィチの特性であると思っているもののほとんどを、彼はムソルグスキーから得たと言っているんです。人間の内面性、瞬時に変わる心模様が、哲学的な深みにまで達しているような音楽を作ることのできた作曲家です」
今回の舞台は、ポーランド国立歌劇場との共同制作で、同劇場芸術監督のポーランド人演出家マリウシュ・トレリンスキが手がけるプロダクション。本来は今年4月に、先にワルシャワで初演される予定だったが、ロシアのウクライナ侵攻を受けて中止となった。
「結果として新国立劇場で世界初演されることになりました。この《ボリス・ゴドゥノフ》ほど、人間の精神の表裏を描き尽くしたオペラはありません。