入江悠監督が『AI崩壊』で描く令和時代の新たな逃亡劇
入江監督から見た大沢たかお、そして岩田剛典の魅力
デジタルの力に感嘆する一方、生身の人間の力に感動する場面も多かったと言う。
「桐生に関しては、当初は昔のハリウッド映画の主人公をイメージしていたんです。けれど、大沢たかおさんが『そこまでアクションがすごすぎると、スーパーマンになってしまう』と。確かに桐生は科学者としては天才だけど、肉体的には普通の人。だからアクションに関しても、もっと無様にしたいと」
撮影中は、大沢と何度もディスカッションを重ね、桐生のキャラクター像を構築していった。「大沢さんは、僕が頭の中でイメージしていたものを、ちゃんと生身の人間に落とし込んで表現してくれた。大沢さんの意見が入ることで、僕の考えていたものがより豊かになったんです。これは今の人工知能の技術ではできないこと。
俳優とコミュニケーションをとりながらつくっていく映画の面白さを改めて実感しました」
他にも大沢たかおの演技プランが活かされている場面は随所にある。
「娘役の心ちゃんと手をつなぐシーンは、大沢さんのアイデアです。手をつなぐことで温度が伝わり、父親ひとりで娘を育ててきた日々や、娘を助けたい気持ちがより明確になった。