片岡仁左衛門と坂東玉三郎、初共演の『婦系図』ほか、時代物の名作から新作まで　歌舞伎座「錦秋十月大歌舞伎」開幕

曽我箱王：尾上眞秀、曽我一万：尾上右近後列左より）小林朝比奈：坂東巳之助、化粧坂少将：尾上左近、工藤左衛門祐経：尾上菊五郎、大磯の虎：中村魁春、秦野四郎：中村橋之助©松竹
歌舞伎の様式美が溢れる舞台に、息ぴったりの曽我兄弟のふたり。客席からは、兄弟のこれからに期待を膨らませ、大きな拍手が送られた。

昼の部の最後は、『権三と助十（ごんざとすけじゅう）』。駕籠舁の権三（中村獅童）と助十（尾上松緑）が暮らす神田橋本町の裏長屋では、夏恒例の井戸替えが行われている。
昼の部『権三と助十』左より）助十：尾上松緑、権三女房おかん：中村時蔵、家主六郎兵衛：中村歌六、権三：中村獅童©松竹
長屋総出の中、権三が参加していないことに助十が腹を立てて言い争いを始める始末。権三と女房おかん（中村時蔵）の夫婦喧嘩、助十と弟助八（坂東亀蔵）の兄弟喧嘩が賑やかで客席は大喜び。現代では見ることのない、江戸の夏の風物詩が描かれた幕開きは当時の長屋の暮らしを偲ばせ、観客はその様子を楽しむ。そんな騒がしい長屋へ、小間物屋の彦三郎（尾上左近）が家主の六郎兵衛（中村歌六）を訪ねて来る。強盗殺人の罪で入れられた牢で死んだという父彦兵衛（中村東蔵）