『スオミの話をしよう』男たちに「別れても愛してる」と言わせる、スオミの魔性──長澤まさみ主演の三谷幸喜にしかできない映画【おとなの映画ガイド】
三谷監督は次のように語っている。「この映画を何度か観ていてふと浮かんだのが、“この二人が同じ人を愛していたら?”というアイデア。いっそ事件関係者全員が同じ一人の女性を愛していたら、コメディになるぞ……というところから、だんだんと構想がまとまっていきました」。なんともすごい妄想、いや発想だ。
出入りの業者風のバンが玄関に横付けされ、中から作業服を着た男たちが邸宅に入っていく。作業服はカモフラージュで、それを脱ぐとスーツ姿の刑事たち。彼らは入るなり、室内のカーテンを閉めさせる……。このまるで『天国と地獄』のパロディのような導入から、映画ファンは楽しくなってしまうだろう。
この家の主人は、人生訓めいた詩で財をなした詩人・寒川(坂東彌十郎)。一日前から妻のスオミが行方不明で、誘拐事件の可能性があるとみた寒川の世話係(戸塚純貴)が旧知の刑事・草野(西島秀俊)に内密の調査を依頼したのだ。
実は、草野はスオミの4番目の元夫。彼は、正式に警察へ知らせて捜査対応をしてもらうべきだと主張するが、寒川は大ごとにするなということをきかない。そこへ電話が鳴り……。
事件を知ったスオミの元夫たちが次々と集まってくる。