『スオミの話をしよう』男たちに「別れても愛してる」と言わせる、スオミの魔性──長澤まさみ主演の三谷幸喜にしかできない映画【おとなの映画ガイド】
良質な舞台劇に映画ならではの転換が実にうまく組み合わさり、引き込まれる。そして、舞台は意表をついたラストとフィナーレを迎えるのだ。
長澤まさみと名役者5人の夫たちのほか、寒川の世話係に朝ドラ『虎に翼』やSnow Manラウールと共演した『赤羽骨子のボディガード』で話題の戸塚純貴、草野の部下役に瀬戸康史、神出鬼没な女の役で宮澤エマが出演。瀬戸、宮澤は、坂東、小林、長澤(ナレーション)とともに大河ドラマ『鎌倉殿の13人』の出演組だ。
映画は、撮影の約1か月前から入念なリハーサルが行われ、三谷監督によるかなり仔細な演出指示が加えられたそうだ。それも、いかにも映画好きの指示。例えば、坂東彌十郎には「映画『恋愛小説家』のジャック・ニコルソンのイメージで」。宮澤エマには「フランス女優のマリオン・コティヤール(『アネット』他)になったつもりで」とお願いしたという。
特に、何でも知っている謎めいた女性役、宮澤エマは事件のカギをにぎる存在だ。ビリー・ワイルダー作品でいえば、『お熱い夜をあなたに』でクライヴ・レヴィルが演じたホテル支配人のような、奥深い役どころ。
そういえば、長澤の役名スオミだが、この「スオミ」