2023年8月29日 17:00
天国で100歳迎えたラローチャへ 恒例の熊本マリ「夜会」
私が一番力を込めて録音したCDだし、バッハは私のライフワーク。うれしかったですね」
「すべてが難しい」というラローチャの言葉が胸に刻まれている。
「ピアニストになれば、すべてが難しい。やればやるほど難しいと言っていました。簡単そうに見える曲でも、すべてが難しいからと。彼女は日本にいる間も、とにかくいつも練習しているんです。定宿のホテルにはアップライト・ピアノしかなかったのですが、その小さなピアノで、もう何百回も弾いているであろう曲を、自分のフィンガリング、自分の一音一音を確かめながら練習する。完璧はないということですよね。
追求は永遠です。ほんとうにすごいなと思います。そして、演奏は祈り。一音一音が神への祈りだという姿勢も学びました」
10月の「夜会」は、スペイン音楽を中心に、ショパン《雨だれ》やリスト《愛の夢》など名曲も織り込んで誰でも聴きやすいように構成している。ラローチャもしばしばそうした多彩なプログラムを組んだ。
「なるべくみなさんが知っている曲も入れながら。でも《雨だれ》はスペインのマヨルカ島で作曲されていますし、リストも《スペイン風狂詩曲》を作曲したり、スペインとつながりがあります。