『フェラーリ』マイケル・マン監督インタビュー。「人生は映画のようにシンプルではない」
登場人物たちの想いと不満が沸騰していく中、エンツォは事態を打開するべくイタリア全土を横断する公道レース“ミッレミリア”への出場を決める。
本作は約30年前にエンツォ・フェラーリの伝記本をベースに脚本づくりがはじまった。しかし、マン監督はこの映画でエンツォとラウラの“ふたりのフェラーリ”を対等な主人公として置き、そこにリナ・ラルディのドラマを絡めた。
「エンツォ、ラウラ、リナの関係性は本当にユニークなものです。息子を失ったことでエンツォとラウラの関係はよりドラマティックなものになっていきます。エンツォは妻につらくあたることがある一方で、とても献身的になったりもしました。ラウラは夫に裏切られたと感じていて、息子を失った悲しみとトラウマから抜け出せていません。そしてふたりが共同で立ち上げたフェラーリ社が危機に陥った時、会社をどうすれば良いのか、どうすれば救えるのか知っていたのは、実は妻ラウラの方だったんです。
つまり、ふたりは“共に生きる”こともできなければ、“相手なしに生きる”こともできない関係になっています。私たちがよく観る映画やドラマは人間関係や対立がシンメトリー(左右対称)に設定されていて、最後にはスッキリとした解決が描かれますよね? しかし、エンツォとラウラは物語よりもずっと複雑な関係でした。