『フェラーリ』マイケル・マン監督インタビュー。「人生は映画のようにシンプルではない」
オペラでは日常よりも感情が少し誇張されて描かれ、観客は感情の波に身をまかせながら楽しむことで、その波が観客の記憶や回想を誘発するわけです。
そう理解した時、あの一連のシークエンスでオペラを使おうと思いました。オペラの楽曲が流れ、登場人物たちがその波にのみこまれる時、彼らは意識しないままに不随意に何かを思い出したり、過去の記憶にアクセスするようになるのです」
エンツォ・フェラーリは“死”に囲まれながら生きてきた
マイケル・マン監督
危険なレースも、ライバル社との駆け引きも、夫婦間の闘争、不貞、後悔もすべてが同じ場所で、圧縮されて描き出される。マン監督は「もし時間ができたら、この映画の舞台になっているモデナに足を運んでもらいたいです」と笑顔を見せる。モデナはイタリアの都市で、フェラーリの本拠地。本作の舞台になった街だ。
「いま私が暮らしているシカゴや、東京、ニューヨークなど、世界には大都市がたくさんありますが、そういう大都市を圧縮したのがモデナなんです。この街にはフェラーリがあり、ライバルのマセラティがあり、ルチアーノ・パヴァロッティが出てきたオペラハウスがあり、世界で最高のレストランが並んでいます。