2022年3月25日 17:00
複雑なものを複雑な解像度のまま見る―『もはやしずか』加藤拓也×橋本淳インタビュー
――橋本さんが加藤さんの作品に惹かれる理由とは?
橋本とても複雑なんですよね、書いているものと求められているものが。脳内と体が乖離していても、伝えたいことと思っていることと言っていることはまた全部違う。だから一瞬でいろんなものが頭の中によぎっていなければ出来ない難しさがあって。演出家としては、僕が知らず知らずのうちに身につけてしまった錆を、きれいにこそぎ落としてくれる人。ちょっとでもわかりやすいリアクションを取ると、「少しトゥーマッチですね」なんて言われるので非常に恥ずかしくて(笑)。本当に信頼していますし、ごまかしが利かない分、とても怖い演出家でもあると思います。
演じる康二はすごく愛を求めている人
――新作『もはやしずか』ですが、不妊治療や育児を題材に選ばれた経緯は?
加藤物語が物語として存在しているだけで、僕としては特に不妊治療や育児を特別な題材にしたつもりはありません。でもひとつ、“答えが出せないこと”という側面はあるのかなと。もしくは“僕たちが普段見ないようにしていることを再確認する”、みたいな作業ではあるのかもしれません。
橋本いろんな思いをかき乱してしまう可能性もあり、やることが怖くなるような台本だと思いました。