宝塚で話題作連発の演出家・上田久美子が生み出す物語のオリジナリティ
情報化が加速度的に進んでいる時代なので、今やらないと遅すぎると思ったのですが、宝塚でこういう題材を上演するのは珍しいかもしれません」
宝塚としてはかなり挑戦的、実験的な舞台になりそうだが、久しぶりに手がける小劇場作品だからこそ、柔軟に挑むことができるオリジナルの題材とも言えるだろう。
「大劇場のお芝居では、先人から受け継いだ伝統芸を守るという意味もあって、自分が好きな物より、古典的な物を演ったほうがいいと思いますが、小劇場で、短期間に少人数でとなると、逆に挑戦的なことをやってみたいなと。歌劇団にはたぶん両輪が必要なのだと思います。今回は、ただ自分が語りたい物語を語ろうと思っていて、あまり宝塚だということは意識しないでやってみたいですね。意外と生徒たちもそういう挑戦にやり甲斐を感じているようで、今の世の中に対して何か問いかけたり考えたりという、文化的に資する新しいものを作りたいという気概が、時にはキャストにも必要なのではないかなと思うようになりました」
上田作品は多くの観客の感涙を誘ってきたが、これも、その効果を意図して題材を探したわけではない。『星逢一夜(ほしあいひとよ)』(2015年)