くらし情報『キース・へリングがNYの地下鉄駅に描いた理由とは? 密着取材で見た「サブウェイ・ドローイング」の現場(文:村田真)』

2023年12月22日 17:00

キース・へリングがNYの地下鉄駅に描いた理由とは? 密着取材で見た「サブウェイ・ドローイング」の現場(文:村田真)

表紙
キース・ヘリングのことは雑誌で知っていたし、ドクメンタ7で作品も見ていたが、正直なところ絵がマンガチックで子供っぽく、やや軽薄に思えた。ちなみに当時日本では「ハリング」とか「ヘーリング」とか呼ばれ、『カレンダー』が「ヘリング」と表記するまで統一もされていなかった。

ニューヨークに着いてさっそく会ったキースは「細長い」人だった。スラッと背が高いのだが、楊枝のように細長い身体の上に小さな童顔が載っているので、いかにもアンバランスな印象だった。スタジオでいろいろ話を聞く。あまり外国人にインタビューしたことがなかったので、「Cause I」で話をつなげていくのがおもしろかった。「なぜなら」と自分がやっていることにすべて理屈をつけて延々と述べ立てていくのだ。絵が単純なのは記号論やカリグラフィを学んだからでもあるが、素早く描いてすぐ逃げるためでもあり、地下鉄に描くのは美術館やギャラリーで発表するよりはるかに多くの人に見てもらえるからだ、といったように、理路整然と自分の行動を社会化していく姿勢は、当時日本で台頭していたニューウェイブの連中の感覚的・極私的な言葉とは雲泥の差だった。
キース・ヘリング、おもしろいじゃん! 初めてそう思えた。

関連記事
新着くらしまとめ
もっと見る
記事配信社一覧
facebook
Facebook
Instagram
Instagram
X
X
YouTube
YouTube
上へ戻る
エキサイトのおすすめサービス

Copyright © 1997-2024 Excite Japan Co., LTD. All Rights Reserved.