おとな向け映画ガイド 今週のオススメはこの4作品。
21世紀初頭のアメリカ。『サラ、神に背いた少年』という小説がベストセラーになりました。作者はJ・T・リロイ。女装の男娼だった経験をもとに書いたといい、カバーをみるとミステリアスな美少年です。セレブやアーティストからも支持され、時代の寵児となったこのリロイなる美少年作家、実は存在せず、40過ぎのローラという売れない女流作家の創造物でした。写真も適当にみつけたものでした。が、ローラが、写真のイメージそのままの、中性的な魅力を持つ女性サヴァンナをみつけ、彼女にリロイを演じさせると、これが大成功。サヴァンナは見事になりすまし、パリで堂々と記者会見をしたり、ハリウッドで映画化されるとカンヌ映画祭に現れたりと大ブレイク。
ところが、2006年、ニューヨーク・タイムズの報道でこの嘘が暴かれてしまい……。この事件は、ローラを中心に描いた『作家、本当のJ・T・リロイ』というドキュメンタリー映画にもなっていますが、今回の作品は、リロイを演じたサヴァンナが書いたノンフィクションをもとに、彼女も製作に加わって作られています。誰かになりすますことの背徳的な魅力と、罪悪感というよりバレたらどうなるのかという恐れと、バレてもいいやという開き直った行動、わかるような、わからないような。