松村北斗×上白石萌音、ふたりの繊細な演技が光る──三宅唱監督『夜明けのすべて』 【おとなの映画ガイド】
死んでしまうのではないかという恐怖心も、4つ以上の症状が同時に、というのも尋常ではない。
一方、PMSも腹痛、頭痛、情緒不安定、イライラ、抑うつ、不安、眠気、集中力の低下など、さまざまな症状があり、生活に困難を感じるほど強いPMSを示す女性の割合は5.4%程度という。こちらは、周りにいたのかもしれないが、わからない。もしいたとしたら、配慮が足りなかった、と今さら悔やむ。
三宅唱監督も原作小説を読むまで、PMSもパニック障害も、まるで詳しくなかった、という。
そんな、パニック障害の山添くん(松村北斗)とPMSの藤沢さん(上白石萌音)の物語。ふたりは、こども向けの科学機器を制作・販売する小さな会社「栗田科学」で席を並べる同僚同士。偶然のいきさつで、お互いの病気のことを知ってから、どんな風に向き合い、変わっていったかを描く。ふたりの関係は、恋人とも、友だちとも違う、「生きづらい世界」を伴走してくれる同志のような存在といったらいいか。
上白石萌音が演じる「藤沢さん」の方が少し年上。
映画は、雨の中、バス停の前で濡れ鼠になって途方に暮れている、いかにも新入社員然とした藤沢さんの姿から始まる。