松村北斗×上白石萌音、ふたりの繊細な演技が光る──三宅唱監督『夜明けのすべて』 【おとなの映画ガイド】
大企業に入社早々、トラブルを連発し、辞表をだし、あっさり受理される藤沢さん。その後、バイトやパートを経験し、この会社に転職してきた。
年下の、松村北斗が演じる「山添くん」も大企業で働いていたようだが、突然パニック障害に。生活をスケールダウンし、アパートから歩いて通える、比較的のんびりとして、負担もプレッシャーも少ないこの会社に入ったばかり。
ふたりは、特にカミングアウトしているわけではないが、60代の年長者がほとんどのこの会社では、社長を始め、みな、心得ている感じ。
月に一度、爆発し、イライラを皆にぶつける藤沢さんも、翌日はシュークリームを買ってきて、みなに謝ってまわる。同僚たちは、逆にそのお詫びのお菓子を楽しみにしているようなおおらかさだ。そんなある日、山添くんが、パニック障害の発作をおこし、藤沢さんがそれに気づき……。
瀬尾まいこの原作では、ふたりの職場は建築資材や金物をホームセンターに卸す金属関係の会社。それをミニ・プラネタリウムを扱う会社にした着想がなんともすてきだ。脚本は、三宅唱と和田清人。
「『夜明け』を単に希望の比喩とせずに、さまざまな意味を持ちうる『夜』を描きたいと考えていたところ、たまたま宇部市のプラネタリウムに行く機会があり、これはいい!と思ったんです」