『本心』池松壮亮、石井裕也インタビュー。「今作は“記憶を記録すること”の映画」
小説を読んだ池松は映画化を希望し、これまでも繰り返しタッグを組んできた石井監督に声をかけた。
池松平野さんの小説は、小説として素晴らしいのはもちろん、映画的な題材を扱っているものが多く、みんなが映像権をほしがる作品だと思います。コロナ禍で、これまでの映画の価値観が崩れていくことを感じていました。誰もが暗闇の中にいたと思います。映画や物語の可能性をもう一度自分の中で考えている時に今作に出会い、これだと思いました。
もちろん、この小説を映像化して良いものなのかしばらく悩みました。2020年の2月頃、世界中でコロナウィルスがまん延し始めた時、石井さんと僕は韓国で映画(『アジアの天使』)を撮っていて。その後も連絡を取り合いながら意見や気持ちを共有していました。
そうした中で、「やはりこの小説を映画にしたい、40代に入る石井さんにこの原作と出会ってほしい」という思いが膨らんでいきました。
石井小説の連載中から読み始めたんですけど、新しい話を読んでいくたびにまったく新しい未知の世界に連れていかれるような感覚がしたんです。僕が読み始めたのは、ちょうど2020年の末で、当時はコロナという未知のものに世界が覆われて、自分たちがどうなってしまうのか全くわからない状況だった。