『本心』池松壮亮、石井裕也インタビュー。「今作は“記憶を記録すること”の映画」
そのふたつがピタリと重なって、この小説がコロナ前から書かれているにもかかわらず、その時に自分が抱えていた不安と符号したことにもビックリしたんです。
この物語も、この映画も結末まで観ても“どう言葉にして良いのかわからないもの”かもしれない。でも、それこそが今の時代のリアルだと思いますし、自分もそういう題材に果敢にチャレンジしていかなきゃいけないと思っていましたから、この小説を映画化することで、自分がこれまでやったことのない新しい表現ができるのではないかという期待感もありました。
劇中には加速度的な進化を遂げるテクノロジー(人工知能や仮想現実など)が登場し、社会の基盤が揺らぎ、不安定な状況で生きざるを得ない社会の行末が描かれる。完全な未来ではないが、完全な空想でもない。現代の知見と想像力を動員して“私たちの現在地”が透けて見える。
石井この映画は2023年に撮影したんですけど、もし前年に撮影していたら、あるいは翌年に撮影していたら、この映画とはまったく違うニュアンスの映画になったと思います。完成した映画はまさに“現在の答え”で、テクノロジーの急激な進化の流れを読みながら、一番いいバランスを見つけていくことに苦心しました。