『本心』池松壮亮、石井裕也インタビュー。「今作は“記憶を記録すること”の映画」
テクノロジーの加速によってチャットGPTなどの生成AIが世界に普及しました。神の力を持つテクノロジーを手にした人間が人間を創造してしまう時代、死や生を克服する時代がすぐそこまでやってきたということなのかもしれません。人間が神の領域に大きく一歩踏み込んでしまったのではないかと思います。AI元年と呼ばれた昨年2023年に『オッペンハイマー』が公開されました。AIは同等の脅威になるという警鐘だとも言われています。
そして今作は、未来で彷徨う朔也を中心とした、近未来迷子エンターテイメントなんだ、というのが石井さんと僕との合言葉でした。
石井記憶ってすごく曖昧で不確かじゃないですか。これから僕たちが経験していくことは、たぶんそういう記憶に近いものだと思うんです。
たとえば仮想空間で誰かと出会うとか。そういう手触りがない不確かなもので、おそらくこれからもある種のむなしさを抱えたまま「これだ」という実感が希薄なまま生きていくことになる。
そうなると、どうしてもこれからの世の中に対して悲観的にならざるを得ないんですけど、ここ最近の僕の一貫してテーマとして、そういう状況下でも“希望”というものを捕まえにいきたいと思っているんです。