『本心』池松壮亮、石井裕也インタビュー。「今作は“記憶を記録すること”の映画」
こんなこと10年前なら絶対に言ってなかったと思うんですけど、ある年齢的なものなのか(笑)
だからこの映画でも、人と記憶の話だからこそ、それがおぼろげで、実感の乏しいものであるからこそ、そこで見つけられる希望というものに向き合いたい、と思いました。
私たちの日常はどんどん窮屈で、その足場は不確かなものになっていく。そんなある日、すでにこの世にいない人、記憶の中にしかいない人が頭の中で姿を現す。その人が優しかったり、厳しかったりするのは、“あなたの記憶”の中のその人が優しくて、厳しいからだ。そして、言うまでもなく、この法則は記憶の中だけでなく目の前の実在する人間にも当てはまる。この人は笑ってるのか?本当は怒ってるのか?その本心は”あなたの心”の中にしかない。あなたが変われば、記憶の中のあの人が変わる、目の前の人が世界が違った姿で出現する。
映画『本心』で主人公・朔也は社会の変動やテクノロジーの進化によって、さらに不確かに、さらに不安定な世界で迷い、彷徨いまくる。
同じ場所を行ったり来たりし、言わなくてもいいことを言っては後悔し、自分だけに都合の良い想いに足をとられる。そんな異色の迷子エンターテイメントの最後にどんな“希望”が待っているのか?石井監督は真摯にこう語る。