【特集・沢村一樹さん】建築家・谷尻誠さんと語る、住まいと暮らしと仕事のこと(後編)
自分のアイデアが入れば、仮に使いにくくなったとしても、自分が出したアイデアだからそれを使いこなそうとしますよね。でも、僕が提案したプランで使いにくかったら、「何だよ、プロなのに」ってなるじゃないですか。プロの意見だけではなく、お施主さんと一緒に切磋琢磨してつくり出したものの方が、愛着は生まれます。僕一人だけの意見でものをつくりたくありません。そう考えると、やっぱり、もどかしい状況が一番いいんです。
谷尻流、アイデアの出し方
谷尻さん:アイデアについて言うと、アイデアって“閃き”ですよね。金八先生みたいなことを言いますけど、この漢字は“門”の中に“人”がいるんです。人が来て門を開くから、“閃く”。
つまり、一人で考えるよりも誰かが来た方がアイデアは閃くわけです。
沢村さん:おぉ!
谷尻さん:思いがけないことを言ってくれるから、自分の中のアイデアが開くんです。自分一人で悩んでいても、閃きは生まれない。額に拳をあてて悩むポーズがありますけど、あれは“悩んでいるポーズ”が好きなだけです。
沢村さん:そう言いますよね。あのポーズをして物事を考えている人は、あまりいない。
谷尻さん:考え始めるまでのアイドリングが長いだけなんです。