【特集・沢村一樹さん】建築家・谷尻誠さんと語る、住まいと暮らしと仕事のこと(後編)
携帯電話なんて、その最たる例で。最初「すごいな」というものが出てきたとしても、それより新しいものが出ると、それはもう“古いもの”になる。その過程をどんどん繰り返して、便利なものを追求し続けるんです。これは、あらゆるものに当てはまるんですよね。住まいも同じで、今より良い所に移っても、また不満を見つけるんです。
でも、“愛着”って、その考えを超えるんですよね。
沢村さん:へぇ~。
谷尻さん:究極、使いにくいものでも、自分が気に入ったものであれば、長く使いますよね。
沢村さん:「この手間が逆にいい!」とか言っちゃうかも。
谷尻さん:古い車に乗っている車好きのおじさんなんて、「故障は自分の名誉だ」みたいに語るじゃないですか。そのダメ自慢をし始める理由って、やはり愛着だと思うんですよ。住まいも、その人の愛着がどこにあるのかを見いだせれば、仮に他の人が使いにくくても、その人からすれば“価値”になるんです。
沢村さん:谷尻さんに依頼する人は、どんなところに愛着を持っているんですか?何か傾向とかあります?木目が好きとか。
谷尻さん:雰囲気でいえば木や石だと思うんですけど、パーツでいったら、自分なりに使いこなせるものがあるとか自分のアイデアが入っているとか……ですかね。