手仕事のぬくもり。カラフルなお針子道具「加賀のゆびぬき」のこと
「当事、私は札幌の学校に通っていて、故郷である金沢のものが懐かしくて。手作りのものを身に着けたいという気持ちもあったので、地元のゆびぬきを作ることにしたんです」
古い茶屋町や神社仏閣が残る金沢で育ったせいか、明治以降の開拓で洋風の建造物が建ち並ぶ札幌で暮らしていると、和のものが恋しくなってしまったのだとか。
思いがけず、ゆびぬきの制作が難航した理由
「もともと、ゆびぬきは暮らしの実用品のひとつ。使っているうちに傷んだり、古くなったものは捨ててしまうものでした。市販品が手に入りやすくなると、作る人も減っていってしまいました。そのためにいざ作ろうにも、資料もない状態。図書館でも見つかりませんでした」
親から子へと家庭内で受け継がれていったのであろうゆびぬきは、作り方の手順を書いた実用書もありません。今と違い、携帯やインターネットのオンライン通話もできない頃のこと。
大西さんは実家に帰省した際に、加賀てまりの名人だった実家の祖母に教わることに。札幌に戻ってからは、電話やFAXなどでやりとりを続けて作りました。
「作り出すとすっかり、ゆびぬきの美しさに魅せられてしまいました」
おばあさまが書き溜めたゆびぬきの図案を札幌で作り続け、大西さんはできた作品をホームページで公開していきました。