【ジェーン・オースティン生誕250周年】ジェーン・オースティン 著 パーカー敬子 訳『理性と感性』第一巻 第一章特別公開
エリナは恋人エドワードの秘密に悩み、マリアンは魅力的だが無責任なウィロビーに翻弄されます。しかし、姉妹は困難を乗り越え、真実の愛や家庭の安定を見つけることで、理性と感情の調和の大切さを知るのです。
『理性と感性』第一巻 第一章 より
ダッシュウッド家はサセックス州(イギリス海峡沿いの英国南東部の州)に長年住みついた旧家だった。所領地は広大で、その中心にあるノーランド荘パ ー園クの大邸宅に住み、代々品行方正な家柄で、近隣の人々の評判も良かった。ノーランドの先代は独身、長寿で、長年のあいだ姉が常の話し相手であり女中頭として家庭を取り仕切っていた。しかし十年前にその姉が亡くなって、老人の家庭には大きな変化が起きた。亡き姉の穴埋めに、老人は甥のヘンリー・ダッシュウッド氏一家を呼び寄せたのである。この人はノーランドの法律上の後継者であり、老人はこの人に財産の全てを遺すつもりでいた。
甥一家に囲まれて老人の日々は安泰であった。彼は甥一家全員を前にも増して気に入っていた。ヘンリー・ダッシュウッド夫妻は、利益の点からばかりでなく、心からの善意に基づいて老人の望みを叶えることに常の注意を払った。それは、歳相応な実質的な心地良さを老人の日々にもたらした上に、明るい娘達は彼の日常に興を添えていた。