くらし情報『【ジェーン・オースティン生誕250周年】ジェーン・オースティン 著 パーカー敬子 訳『理性と感性』第一巻 第一章特別公開』

【ジェーン・オースティン生誕250周年】ジェーン・オースティン 著 パーカー敬子 訳『理性と感性』第一巻 第一章特別公開

ヘンリー・ダッシュウッド氏は自分や息子のためよりは、後妻と娘達のために遺産の分け前がもっと大きかったら良いのにと思った。それなのに、遺産の大部分は息子ジョンとその息子で現在四歳の子に遺されてしまったのだ。老人の遺書は、ヘンリー・ダッシュウッド氏にとって最愛で最も経済的備えの必要な妻や娘達のために遺産を分譲したり、値の高い森の木々を売って助けとすることができないように設定されていた。遺産全体がこの四歳の幼児の利益になるように凍結されてしまったのだ。この子はたまに両親に連れられてノーランドを訪れ、二、三歳の子の常で回らぬ舌でしゃべろうとしたり、自分勝手なことをしたがったり、いたずらして面白がったり、騒々しくしたりして老人に可愛がられるようになり、ダッシュウッド夫人や娘達が長年してきた親切を無に帰する結果にしてしまったのだ。しかし老人は別に不親切なことをしたかったわけではなく、愛情の印として三人の娘それぞれに千ポンドずつを遺した。ヘンリー・ダッシュウッド氏の失望は初め大きかった。しかし彼は朗らかで楽観的な人で、まだ何年も命がある筈だし、経済的に暮らし、既にかなりの量であり増加の見込みもある農作物を売って相当な額を蓄えることができるわけだ。
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